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How to Tunning - チューニングについて -

 


 ドラムはヘッドが適正にチューニングされてはじめて真価を発揮するもので、いいシェルにいいヘッドが張ってあってもチューニングができてないとどうしようもないドラムに仕上がってしまいます。(むしろ、チープなシェルにチープなヘッドが張ってあってもチューニングのしっかりしたドラムの方が断然音がいいし気持ちいい)
 ただ例にもれずチューニングも「これが絶対正しい!」というものがあるわけではなく、演奏する人なり聞く人なりが気持ちよければそれでいいわけなんですが、ここではその「気持ちいいチューニング」を見つけるために必要な基本的な知識を紹介したいと思います。

チューニングの基礎知識



チューニングの流れ

 セット全体のバランスについては後回しにして、まずはシェル単独のチューニングについて説明します。
1. チューニング前の準備
パーツをクリーニングする。
特にボルトとフープ、シェルとヘッドの接触するエッジ周辺の汚れやほこりを落として、金属パーツは潤滑剤でクリーニングします。

クリーニングはチューニングのたびにやることもありませんが、本格的にやるときや暇なとき(笑)はここらへんに気を使うことでチューニングがやりやすくなります。
2. 裏面のチューニング
上記「チューニングの基礎知識」に書いたように、裏面のヘッドは打面の振動に共鳴してシェルの響きを左右する性質があるため、こちらを先に決めておいた方がより繊細な調整が必要な打面のチューニングをやりやすくなります。
打面からやっても構いませんが、結局、表裏をいったりきたりする状況に陥って効率が悪くなることが多いので「効率面を考えるとどちらかと言えば楽な裏面からやっときましょうか…」といった感じです。
(1) 最初はボルトを指で締められるところまで締める。

裏面のヘッドが取り外してある場合はヘッドを取り付け、すでにヘッドが取り付けてある場合は一度全てのボルトを完全にゆるめた後、各ボルトをチューニング・キーを使わずに指でしめられるところまでしめます。

(2) 次にチューニング・キーを使って各ボルトを大体同じくらいに締めていく。

指で仮止めした状態からだとかなり締め込んでいく必要がありますが、各ボルトは一度にあまりたくさん締め込まず何度かにわけて締め込むようにしましょう。
最初のうちはキー1回転(360度)程度を一度に回してもいいですが、締め込むに従って一度にしめる角度を少なくしていく感じです。
一般的に「ボルトは対角線に締めていく」と言われていますが、実際のところ「全体をなるべく均等に締める」ことにさえ留意すれば締める順序はあまり関係ないと思います。(…というかken的には「ボルトを締める順序なんてどうでもいいです」と言い切ってしまいたいところですが、あまりに多くの解説書等で「対角線に…」と書かれているのでちょっと遠慮しました…)

(3) ある程度締め込んだところで、ヘッドを手のひらで押してヘッドやボルトの弛みをとる。

チューニングしている面を上にしてシェルを床におき、手のひらをヘッドに押しつけて、ちょっと力を入れる程度の強さで「グィッグィッ」っと数回押し込みます。(ヤンワリ押す程度では意味がないし、ヘヴィー級の人が力まかせに押すと多分壊れますから(-_-;)、やったことのない人は「ギュぅ〜ー」と徐々に圧力をかけて押し込んでいく感じにやってみるといいでしょう)
その時「メキメキッ…」とか「メリビシッ…」みたいな嫌な音(人によっては気持ちいい音かも?)がしますが、それが普通なので…というか、そうやってキシミを出なくするのが目的なのでビビらなくても大丈夫です。(新しいシェルやヘッドの場合は、特によく鳴ります)
何度か繰り返して、キシミ音があまりしなくなったらとりあえずOKです。
この「弛み取り」は、以後もある程度チューニングが進んだところでまた適当にやってください。(あまり何度もやる必要はありませんが、まぁ「適当に気になったタイミング」でやりましょう)

こうすることでチューニングが安定して演奏中に弛みにくくなるのです。
実は裏面についてはそれほど神経質にならなくてもいいのですが、打面については演奏で叩きまくられるため、これをやってないと演奏中にどんどんチューニングが崩れてしまいます。

(※注意!)
スネアの裏面(スネアサイド)はものすごくヘッドが薄いので、軽く押しただけでも簡単に手や指の跡が残るほどのダメージ(かなり致命的なダメージとも言える…)を与えかねませんから、スネアの裏面については「ごくヤンワリ」とやる…、というか、むしろやらない方がいいかもしれません。
またその他のヘッドについても、「指」で指圧のように強く押し込んだりすると同じことになるし、手のひらで押すにしても一部分に力がかかり過ぎると良くないので、なるべく一点に力が集中しないように気をつけましょう。

(4) なんとなくイイ感じになるまでチューニング・キーで締めていく。

上記(3)の作業をやってみると、それまで結構締めてたつもりだったのがだいぶ弛んでいることに気づくと思います。
そこで再びチューニング・キーでなんとなくイイ感じになるまで締めていきます。
この「なんとなくイイ感じ」という感じなんてわからないよ…という人もいるでしょうが、とりあえずは「自分的にはイイ感じ…かも」くらいでいいです。
詳しくは下記「打面と裏面のバランス」を読んでもらえればわかるように、裏面のチューニングは人によって「かなりユルユルが気に入ってんだよね」ってタイプもいれば、「裏面の張り具合? そりゃ打面よりはかなりキツく張ってるって。あったりめーじゃん。…エッ! 裏の方をゆるくしてるヤツもいるの?マジ…?」ってタイプもいて、かなり自由度が高いのでとりあえずは「大体」で問題ありません。

(5) 各ボルトの締め加減がなるべく均等になるように微調整する。

ここが最大のポイントになります。
ヘッドのテンションがユルめでもキツめでもそれは単に好みの問題ですが、どんなテンションで張るにしても「いい音」で鳴らすためには、ヘッドがなるべく均等に張られている状態にしなければなりません。(実はここまでに説明してきた内容は、ただただこの「なるべく均等に」張りやすくするための準備だったようなものです)
ここからは、最初に書いた「自分の感覚(視覚・聴覚・触覚・第六感…)を総動員した作業」が必要になります。(逆に言えば、ここまでの作業はあまり考えすぎずごく機械的に処理してもあまり問題ないわけです)

結論から言うと、ヘッドが均等に張られているかどうかを確認するには、各ボルト付近を軽く叩いてみて全部が似たようなピッチに聞こえればほぼ均等に張れているということになります。
(ボルト付近の音を叩いて確かめるのは、わざわざスティックを使わなくても、チューニング・キーや指先で軽く「トントン」と叩いてみるだけでも十分です。でもスティックの方がわかりやすそうだったらそれでもいいです)
もしどこかのボルト付近の音が他よりも低く聞こえたら、そのボルトを締めて高くしてやります。
逆に高く聞こえたら、そのボルトを弛めて低くしてやります。

それを繰り返していけばやがて全体が均等になるわけですが、実際にやってみるとわかるようにこれがなかなか難しいんです。何故ならヘッドは各ボルトが互いに引っ張りあっていますから、1つボルトを動かすと微妙に周りに影響が出てしまうんですね。
ここらへんは試行錯誤とカンでやっていくしかありませんが、ごく構造的な現象として「あるボルトを締めてピッチを高くしたら(または、弛めて低くしたら)、そのボルトの両側2つと対角線にある1つもつられてピッチがあがりやすい(または、さがりやすい)」ということを認識しておけばきっと微調整の役にたつと思います。

また各ボルトの締め具合を揃えるための全く違ったアプローチ方法もあります。
ある程度チューニングが出来上がったところでヘッドを叩いてみて(ボルト付近を軽くトントンという感じではなく、ヘッド中央をスティックである程度しっかりと叩きます)、その音の余韻が消えないうちにボルトの1本を軽く締めたり弛めたりしてみると、その動きに合わせて余韻のピッチも上がったり下がったりするはずですよね。
それを全てのボルトについて1本ずつ確認してみると、ピッチの変化があまり感じられないボルトが見つかるかも知れません。
この「ピッチの変化があまり感じられないボルト」とは、つまり「他のボルトと比べてあまりテンションがかかってないボルト」ということになりますからそのボルトはもっと締め込んでやります。
そうすることで逆に弛めてやらなければならないボルトが現れるでしょうが、それを繰り返していくうちにやがては全てのボルトが均等に仕上がることになります。
この方法のメリットは、1本のボルトを動かすことで全体のピッチがどう変わるかを耳でしっかり聞くことになるので、(ある程度経験を積めば)1本1本を個別に聞き比べながらチューニングするよりずっと効率よく(素早く)全体のバランスを整えることができるんです。

いずれの方法でも全体が均等に張れたら、かなりいい音で鳴るようになっていることでしょう。
これで裏面は一応できあがりです。

(※ちょっとポイント)
チューニング・キーでボルトを動かすとき、締める時は特に問題ありませんが、弛める時は「弛めっぱなしで止めると、いつのまにか予想以上に弛んでしまう」ことがよくあります。(特に打面の場合)
チューニングを安定させるには、弛める時は「予定より少し余分に弛めて、そこから少し締める側に回して止める」のがポイントになります。(これはギターその他の弦楽器をチューニングするときと同じ理屈ですね)

(※ちょっとだけ補足)
これだけ「均等になるように微調整することがポイント!」と言っておきながらアレですが、下記の「打面のチューニング」や「打面と裏面のバランス」を読んでもらえばわかるように、実際には打面と裏面はお互いに影響しあって最終的なチューニングが決まります。
つまり、裏面だけの段階であまりキッチリ仕上げたとしても、後で打面のチューニングとバランスを取るために多少変えなきゃいけなくなる可能性が高いのです。
というわけで、裏面だけの段階では「打面のチューニングの邪魔にならない程度に均等にしておく」くらいで十分で、最終的に打面のチューニングの仕上げと一緒に裏面もキッチリ仕上げることになります。

3. 打面のチューニング
上記「裏面のチューニング」で「どちらかと言えば楽な裏面〜」と書いておきながらアレなんですが、打面のチューニングも基本的には裏面の場合とほとんど同じです。
作業内容としては「裏面のチューニング」の(1)〜(5)の工程をやることになんら変わりありません。
ただし打面の場合、最終的にピッチをある程度はっきりさせなきゃいけないぶん、(4)の部分だけは裏面より多少シビアになります。

具体的なピッチの決め方は下記「セット全体のバランス」を参考にしてください。
4. 打面と裏面のバランス
上記の基礎知識に書いたとおり、ドラムのチューニングは最終的には打面と裏面のバランスで決まります。
基本的なバランスの取り方としては、音質の好みによって大きく次の2パターンにわかれます。

(1)タイトでしまりのある音にしたい場合
打面より裏面をキツ目にチューニングします。
(2)よく響く音にしたい場合
打面より裏面をユル目にチューニングします。

つまり自分が「タイトな音」にしたいと思っている場合は、「裏面のチューニング」の段階である程度キツ目にチューニングしておけばいいことになり、逆に「よく響く音」にしたいと思っている場合は、裏面をユル目にチューニングしておけばいいわけです。
(スタジオや狭い屋内等で演奏する場合は、音質の好みや演奏ジャンルに関わらず(1)のタイトなチューニングにすることが多いです)

(※打面と裏面のバランスに関する全体的な注意点)
・タム類は全て大体同じようなバランスにチューニングしないと気持ち悪いです。
・バスドラムもタム類と同じようなバランスにすることが多いですが、別扱いにしても構いません。
・スネアはタム類とは無関係に独自のバランスにしても構いません。

また、全てのシェルに共通した注意点として「打面と裏面を全く同じピッチ」にチューニングするのはやめた方がいいです。
打面と裏面が互いの振動をうち消しあって思いっきり嫌な音(破裂音みたいな音)になることが多いのです。

実際にはなかなか一筋縄にはいかない部分もありますが、基本的な傾向としてこうなることを知っておけばきっと役立つと思います。


セット全体のバランス
個々のシェルのチューニング方法は上記の通りですが、ドラムセットには複数のシェルがあるためシェル同士のピッチをどう関係づけるかが問題になってきます。
基本的なポイントは次のようになります。

・タム類のピッチは等間隔の音程で並べる。

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(※補足説明)
混乱を避けるため簡単に「音程」の説明をしておくと、「音程」という言葉は日常的には音の高さや低さを表す言葉として使われることが多いのですが(例:「おまえの歌って音程低いよ…」等)、正しくは「2つの音の高低差」を表す言葉で、例えば「ドとミの音程は3度」(ド→(レ)→ミの3音)、「ソとドの音程は4度」(ソ→(ラ)→(シ)→ドの4音)というように使います。

仮に3つのタム(ハイ・タム、ロー・タム、フロア・タム)があるとした場合「等間隔の音程で並べる」とは、「ハイ・タムとロー・タムのピッチの間隔」と「ロー・タムとフロア・タムのピッチの間隔」がそれぞれ同じになるようにするということです。
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一般的に各タムの音程は3度〜4度程度にチューニングします。
もし3度音程で並べようとする場合は、フロア・タムを仮に「ド」としたらロー・タムを「ミ」にして、ハイ・タムを「ソ」にチューニングします。
4度音程で並べようとする場合は、フロア・タムを仮に「ド」としたらロー・タムを「ファ」にして、ハイ・タムを「シ」にチューニングします。
タムが4つ以上ある場合でも同様に等間隔の音程で並べていけばOKです。

(※注意)
ここで言う「ド」とか「ミ」とは決してピアノやチューナーの「ド(C)」の音とか「ミ(E)」の音に合わせてチューニングしましょうという意味ではありません。
ドラムの場合そういう正確なピッチに合わせると他の楽器と変にハモったりうなったりして気持ち悪いことになるので、むしろ正確なピッチとは無関係にチューニングした方がいいのです。
ついでに言えば、音程について知識のある人だったらここんとこで「3度ってのは短3度でも長3度でもいいわけ?」とか「ド−ファは完全4度なのに、ファ−シは増4度になるけどそれはそれで問題ないわけ?」って突っ込みを入れたくなるかも知れませんが、ドラムの場合はごくアバウトに大体3度〜4度程度の「等間隔」に並んでればOKってことで。(笑)

ある程度「イイ感じ」にチューニングできたと思ったら、隣り合った2つのタム(「ハイ・タムとロー・タム」、「ロー・タムとフロア・アタム」の組み合わせ)を同時に叩いたり交互に叩いたりしてみて、どの組み合わせでも似たようなニュアンスでいい響きに聞こえるかを確認してみてください。
もしどれかの組み合わせで変に聞こえたとしたら、そこの音程が不自然ということになりますから微調整します。

・スネア、バスドラムはタム類とは無関係に好みのピッチにして構わない。

次にスネアとバスドラムについては、タムの音程とは無関係にチューニングしても構いません。
ジャズ系ではスネアからバスドラムまでの全てのシェルを等間隔の音程でチューニングすることも比較的多いですが、まぁここらへんは好みの問題ということで。

・全体的にハイピッチにしたい場合は小さいタムから、ローピッチにしたい場合は大きいタム(フロア)からチューニングしていく。

これは単に段取り(効率)の問題とも言えますが、もし全体をハイピッチにしたいときにフロア・タムからチューニングを始めると次のタムは「ハイピッチにチューニングされたフロア・タム」のピッチより3度〜4度高くチューニングして、さらに次のタムはそれより3度〜4度高くチューニングすることになるわけですが、最初のフロア・タムのピッチが高すぎた場合、最後のタムはどんなにキツく張ってもそのピッチに届かなかったり、届いても音質的にキビしいものになりがちです。
逆に全体をローピッチにしたいときに小さいタムから始めると、同じ理由から最後のフロア・タムはヘッドがユルユルで音になりませぇ〜んといった状況になりやすく、そうなったら「はい、お疲れさん。最初からやり直しね!」ってことになってしまいます。
そんな罠にハマらないためには、全体をハイピッチにしたいときは最初に一番小さいタムから始めて、ローピッチにしたいときはフロア・タムから始めればこういった失敗が少なくなります。



以上チューニングについて長々と説明しましたが、そもそもチューニングについてはドラマーによっていろいろ主義主張の分かれる部分でもあり、ここで紹介した内容もあくまでkenが個人的に「一応ここらへんに注意しながらやってます」といったことを書き並べたに過ぎないと受け止めてください。
最終的には「習うより慣れろ」で、とにかく場数を踏んで自分なりの考え方や方法論を見つけだすことが大切です。

(P.S.)
…と最後まで書いたところで「うっ…、ミュートについて何も書いてないや…」って気づいたけど、とりあえずこれは気づかなかったことにしよう…。(^^;


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